行先は江戸川橋。
一度も降り立ったことのない駅だったのですが、ちょいと目的がありまして。
今話題の『春画展』です。
行きたいとは思っていたものの会場が目白と遠かったので腰が重くなっていたのですが、たまたま大阪の友人が上京していて東京で会おうというお誘いをいただきまして。
このタイミングで都内で会うのならば…と、友人に付き合ってもらい行ってまいりました。
春画(しゅんが)とは、特に江戸時代に流行した性風俗(特に異性間・同性間の性交場面)を描いた絵画。
浮世絵の一種でもあり、笑い絵や枕絵、枕草、秘画、ワ印とも呼ばれる。
また、それほど露骨な描写でない絵は危絵(あぶなえ)とも呼ばれた。
その描写は必ずしも写実的でなく、性器がデフォルメされ大きく描かれることが多い。
(Wikipediaより転載)
ただのエロいもの見たさか?
いえいえ、こんな話を聞いたらきっと見てみたくなる方もいるはず。
桃山時代から明治初期まで盛んに描かれてきた春画ですが、享保の改革でご禁制になります。
しかし非公式となったことで逆にあらゆる規制から解放され、色合いといい技術といい、公に販売されていたモノよりもずっと豪奢な加工が可能になったのです。
そしてそういった豪奢なものを当時の人気絵師たちが描いていた(江戸期のものは版画が殆どですが)というのですからこれは垂涎物。
菱川師宣・鳥居清長・鈴木春信・喜多川歌麿・歌川豊国・葛飾北斎・渓斎英泉・歌川国芳・狩野派…
浮世絵なんて興味ないって方でも聞いたことのある名前があるはずです。
こういった絵師たちが手掛け、非公式ゆえに金に糸目をつけず豪奢に作られた多色摺りの木版画・錦絵の素晴らしさを想像するだけでもワクワクします。
この春画展。
もちろん18歳未満入場禁止。
そして以前大英博物館で開催されて好評を博したもののその内容から国立系の美術館では開催かなわず、今回目白にある「永青文庫(えいせいぶんこ)」にて開催の運びとなったわけです。
小さな展示室が3つあるだけの永青文庫は長蛇の列。
入場は3~40分待ちですが、待っている間も永青文庫の方が展示の経緯や施設の概要、春画の歴史などを話してくださっていて、退屈することなく過ごせました。
予想をはるかに超える来場者数で、驚いていらっしゃるようでしたね(笑)
さて、展示の内容と感想ですが。
いやー、すごかった!
前半の展示は肉筆画なのですが、みなさん、いわゆる日本画ってものすごく平坦で写実性に欠けるような印象をお持ちではないですか?
とんでもないです!
間近で見てもどうやって描いたのかと驚いてしまう程の繊細さ。
遠近法や人物の描き方は独特のものですが、そういった技術がないのではなく、独自に発展した文化なのだというのがよくわかります。
そして版画・錦絵の時代にうつりこれまた感動です。
さすがに贅をつくしているだけのことはある!
凝った絵柄に何重もの色を重ね、ぼかし、金・銀、空(から)刷り…。
展示の説明にも「超絶技巧」という言葉が何度も使われていましたが、これが版画だとは…。
色だけではなく、今でいうエンボスのような加工まで当時の版画の技術で行われているんですよ。
絵師・彫り師・摺り師とそれぞれのプロフェッショナルが技術と贅を尽くして作った版画。
職人好きにはたまりません(笑)
春画ですから絵柄は当然グロテスクとも思えるような性器や男女の営みなのですが、それだけではなく、当時富裕層の子女のために作られた教本をパロディ化したものなども展示されていて、ユーモア溢れる「文化」として根付いていたこともうかがえます。
まあ「春画」としての感想で言うと、男女の閨事というのは、今も昔も大してかわらないのだなと(笑)
そして春画における性器のデフォルメをみると、ここには男性の夢と希望がそれはもうたくさん詰まっているのだなと(笑)
そして最後で最大のお勧めポイントは。
何しろ内容が内容ですから、おおっぴらに飾るものではありません。
秘して所蔵されていただけに、どれも異様に保存状態がいいんです!(笑)
本当に色も鮮やかで、これが江戸時代のものだなんて信じられないくらいでした。
永青文庫の方も、国内外の美術館・博物館・個人蔵含め一般に広く流通したものから大名家所蔵のものまで、これだけの春画が一堂に会す機会はめったにないし、この先もあるか分からないとおっしゃられていましたが、贅沢な展示を満喫させていただきました。
展示を見終わって外に出ると、木々と雰囲気のある建物の合間から画になる月が。
なんだかおまけつきみたいでいい気分になりました。
春画展は前期・後期の2期に分けて開催されていて、前期が今週末11月1日(日)まで。
後期は11月3日(祝)~12月23日(祝)までとなっています。
横浜の方にはちょっとした遠征になりますが、行く価値はあると思いますよ。
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