映画の話をしよう。
映画と言っても、映画館と何十年も続くシリーズもの。
横浜から地球の湾曲に沿っての直線で800㎞彼方…。
過疎化が止まらない、面積は広大だが一万三千人足らずの町に、席数48席のちいさなちいさな映画館がある。
この映画館、94年までは席数220席だった。名を大黒座と言う。
その昔、通学路に面した上映案内看板には、日活ロマンポルノや『エマニエル婦人』のポスターがあった。そっちの映画館か?いやいや、それはレイトショーとかの上映作品だ。職人が描いた手描き看板もあった。
ハリウッドの大作やカンフー映画、『東映まんがまつり』に『ドラえもん』だって上映した。
配給会社やジャンルにとらわれず、なんでも上映していた。
1978年、そこで『スター・ウォーズ』を見たんだ。
『IV』なんてついていないし、それどころか邦訳字幕が現在では用いられない言葉だらけだった。
「フォース」は「理力」、「ウーキー」は「エ●公」。
新聞広告に載っていた、台形の初期ロゴと、帝国軍の戦闘機「TIEファイター」のデザイン及び「六角形の大型ソーラーパネル及びツイン・イオンエンジン搭載」っていう未来先取りな解説にヤラれた小学校三年生のオレは、滅茶苦茶期待したさ。当時の現実世界では、イオンエンジンはNASAで試験段階の代物だった。活用した代表は「はやぶさ」搭載のエンジンだ。「やっと現実的なハードSF映画が出来た」と期待したさ。それまでのSF映画は、超越しすぎたファンタジーだったから。しかし、この期待は裏切られる事は、この映画を観た人皆が知っている。
地元の大黒座に興行が回って来てすぐ、同級生と二人で700円を握りしめて見に行った。
いつもはブルース・リーやジャッキー・チェンが大好きなヤツに、どちらかというと誘われて訪れていた映画館に、初めてオレの先導で行った。
小学生2人で映画館に入れたのかって?
昭和だよ。PG規制なんて無かったさ。しかもこの映画館は個人商店で、当時三代目。もっといえば、クリーニング店併設で、そっちの利益も大事。そう、お客は断らない。
この映画館、ウィキペディアにもしっかりと書かれているし、『小さな町の小さな映画館』(2011)というドキュメンタリー映画〈http://www.chiisanaeigakan.com/〉の“主役”になったし、昨年の夏には『ももいろクローバーZ』のメンバー2名が『幕が上がる』という主演映画の舞台挨拶に訪れたという、知る人ぞ知る映画館だ。
観る前はワクワクしていたんだが、デス・スターへの攻撃が始まってほどなくして、オレ達二人はロビーに出てしまった。
スター・ウォーズが始まる前に、同時上映のトランザム7000を見て楽しんじゃったのもある。あの映画はスーパーカー・ブーム真っ只中の小学生には楽しすぎた。
小学校三年生には長丁場であった事もあるが、予定調和が見て取れるのに、そこに行き着くまでがえらく長くて飽きてしまった。同じカットの使いまわしなどにも気がついていたし。
出た途端に、「どうしたの?」と声をかけられた。三代目の奥様(現在も映画館に居る)だったか、息子さん(現四代目)だったかは定かで無い。正直、見ていて疲れたんだ。
三人で世間話をし、「ほら、そろそろ大詰めだよ」と言われて戻ると、デス・スターが大爆発。
「難しかった?」と聞かれ、「ううん。なんか、ラストがわかっちゃって」と強がってみせた。
「ハリウッド映画だもの。そういうものだよ」と。
そんな様な会話をしたように思うが、今となっては定かでは無い。
他にも、『ゴジラ~メカゴジラの逆襲』(1975年)を、5歳にして何故か一人で観た。
一応、親が同伴だったが、親はゴジラになど関心が無くてほとんど席におらず、映写機を見学していた。親と行ったのはそのただ一回かも知れない。当時は皆、そんなもんだったかも知れない。
子どもだけで大黒座へ行って『ガンダム三部作』や『宇宙戦艦ヤマト』を観たが、行くときは2人で帰りは大勢。あの映画館へは、歩いていける距離だった(5km以内=北海道で言う『目の前』)のもあるが、ほとんどの同級生が子どもだけで行っていた。
大黒座で映画を観終わり外に出た時、毎度「現実とのギャップ」に苦しんだ。
宇宙戦艦の艦隊戦を見た後に、ふと見るとイカ漁の船や、サンマ漁船が映画館から100mも離れていない港内で揺れている。
それらの船は、眩さは宇宙戦艦をしのぐが、攻撃力は皆無だ。
余韻ぶち壊しの現実からなんとか余韻に戻りたく、行きつけのおもちゃ屋の店主や奥さんに「映画観たよ。プラモある?」ってカンジのくだを巻きに行ったり、電機屋のレコード売り場に行って、売り物のサウンドトラック(当時はLPレコードかカセットテープでビニール包装無し)を「視聴させて!」とお願いしたりしていた。
現在の大黒座の四代目の奥様も同様だったらしく、「エイリアン2を観た後、外に出てギャップを感じた」と語っていたそうだ。
で、スター・ウォーズですが…
1978年に一作目を見た8歳当時、まさか7作目をシニア割引で、しかも吹き替え版で、更に言えばシネコンの130席あまりしかないちいさな所で、9歳の息子と並んで観るとは想像もしなかった。
子どもだけでは来ないのか?PG‐13だからか?
首都圏に住まう親は、口をそろえて言う。
「小学生だけでは行かさないよ」と。
スター・ウォーズは、今後こういう展開らしい。
■ Star Wars Episode VII(December 18, 2015) ←イマココ。
■ Rogue One: A Star Wars Story(December 16, 2016)
■ Star Wars Episode VIII(May 26, 2017) ※日本公開は7月
■ Star Wars Anthology: Han Solo(May 25, 2018)
■ Star Wars Episode IX(2019)
■ Star Wars Anthology: Boba Fett(2020) ※確定?
さて、あと何回子連れで行くのやら、行けるのやら。
こんな展開になるなんて、驚きを超えて笑いすらこみあげてくる。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』で、2015年にタイムスリップしたら『ジョーズ19作目』を上映していたってシーンがあったが、2015年に『スター・ウォーズ7作目』2020年(?)に『スター・ウォーズ12作目』をやるとは、さすがハリウッド映画。
そして…
スター・ウォーズもガンダムも宇宙戦艦ヤマトもゴジラも、更にエイリアンも、いまだに映画展開されているって現実に驚く。
だが、大黒座でこれらの映画を上映することはもう無い。
ちなみにスター・ウォーズ熱は既に世代交代というか、息子がドハマリしています。
エピソードVIIが、生まれてからの初上映作品であるという前に、レゴのスター・ウォーズシリーズの玩具とアニメにハマり、テレビアニメ『スター・ウォーズ:クローンウォーズ』、『スター・ウォーズ:反乱者たち』(現在シーズン2が日本放送開始)にハマっています。
写真は息子所有の例のアレ。あの人が若い時に振り回していた、ビーム出るアレ。
大黒座、興味ありましたらどうぞ。1918年(大正7年)創業です。
馬が好きで浦河まで行っちゃうような方、是非お見知りおきを。
映画ロケ地にもなっていますし、検索すれば写真や記事もソコソコ出てきます。
●大黒座がロケ地になった映画(改築前、220席だった頃)
・アンモナイトのささやきを聞いた(1992)
・結婚 佐藤・名取御両家編(1993)
【浦河大黒座 公式ウェブサイト】
http://www.daikokuza.com/
【ウィキペディア―大黒座】
https://ja.wikipedia.org/wiki/大黒座
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