昨年、長年住み慣れた横浜の地から縁あって藤沢の地へ越して1年近くが経とうとしています。
越してからは、毎朝バスにゆられ、JR藤沢駅から大船を経由して、新杉田駅でシーサイドラインに乗り換える日々。
それまでは、会社までシーサイドライン一本だったので、通勤時間も短く周りを見ることもほとんどありませんでした。
けれど、通勤時間も長くなり、乗り換えがあるといろいろな人たちを見ることが多くなりました。人の波にうまく乗り、ちゃっちゃとうまい具合に人を追い越して歩く人、邪魔だと言わんばかりに人にぶつかる勢いで歩く人、ベンチに座ってKIOSKで買ったパンをかじっている人etc。。。
その中で新杉田駅に着いた時ホームのベンチで口をあけて寝ているおじさんがいることに気が付きました。
早く来すぎて寝てるのかしらと、最初は思ったのだけれど、それからほとんど毎朝、私が新杉田駅に早く着いた時もぎりぎりの時間に着いた時も(その差はほぼ20分ほどもあるのだけれど)いつも同じベンチの同じ場所で寝ています。。。。暑い時も寒い時もいつも顔を上に向けて口をぽかんとあけて。。。
どうしたんだろう、何時何分の電車に乗るのかしら、ホームには何時頃きているのだろう。。。いろんな疑問と好奇心が湧き上がってきます。
でもまさか聞くわけにもいかず、そのおじさんを横目で見つつ前を通り過ぎ階段に向かう毎日。いつしかそれが日常の光景となり、いろいろな想像をしながらそのおじさんの前を通り過ぎるのが毎日の日課のようになりました。
ところがこのところ急にそのおじさんを見ることがなくなってしまったのです。
ある日、おじさんの姿が無かった時、いつものベンチは空のままぽつんとそこに佇んでいました。
今日は、具合でも悪かったのかな?そう思いながら、空のベンチを横目に通り過ぎます。
その次の日、そしてまたその次の日。。。おじさんの姿はありません。ある日は若いOLがそのベンチに座っていました。
そしてまた別の日は、中年のサラリーマンが次の電車を待つために座っています。
一年近く…いやもしかしたらそのもっと前からずっと新杉田駅のホームのベンチで寝ていたおじさん。。。いったいどうしたのでしょう。
結局疑問も好奇心も宙ぶらりんのまま、非日常になった日常が、また新しい日常に変わっていきました。
おじさんは今もいません。定位置だったベンチは、空いているときもあり、毎日違う顔の誰かが座っているときもあります。
それでもやっぱり私は、今日もベンチを横目でちらりと見ながら、ベンチの前を通り過ぎるのです。
〒236-0004 横浜市金沢区福浦1-12-10 TEL:045-783-2311(代)